JALが前代未聞の大失態!? 乗客50名を置き去り離陸「2万円で許して。いや、4万にします」

http://n-knuckles.com/case/society/news001217.html

記事の中を見てみると、大雪があった翌日の日曜日に成田空港であった喧騒劇を描いたものだ。

18時ごろ出発予定だったホーチミン行きの便が、21時頃出発に遅延。しかし、最終搭乗案内のアナウンスがされず、50人ほどが置いてけぼりになった、という事件である。

その後のJALの対応は、日本の航空会社に対して高いサービスを求める日本人にとってはいまいちだったのかもしれないが、あの大雪の後の混乱の中の出来事であり、予想が付く範囲の混乱であったともいえよう。完全に想像だが・・・ 最終的に3時間出発が遅延しているということは、途中で何度か遅延が繰り返されるシーンがあったのだろう、それによって乗客はまだ出発しないと踏んで搭乗口まで行っていなかったのかもしれない。ほとんどの便が遅れていたことから、アナウンスも混乱を極め、最終搭乗のアナウンスがされなかった便や、アナウンスが不十分だった便もあることだろう。土曜日は成田空港まで8時間かかった人もいるようだし、相当前に家を出発し、チェックインやら何やらで疲れてどこかで休んでいた人もいるのだろう。

ただ、そのような状況で3時間も遅延している中、搭乗口に早めに行かなかったというのは、乗客のセンスが感じられない。いつ飛ぶか分からないが、他の便も含めて誰もが早く飛ぶことを願っている状況では、私だったら相当早めに搭乗口で様子を見ていると思う。まぁ、現場でどのようなことがあったかは分からないので、正しくないのかもしれない。搭乗口にいたのに、突然ドアが閉まってしまったのかもしれないし、上記は想像の範囲を超えないが。


さて、問題なのはやはりその後の対応だろう。

お客様は、飛行機に乗れなかった時点で不満ではなく「不安」を抱いていた。
そこに対する対処が無いまま、ただ謝罪してお金を渡す行為は、「不安」を「不満」に変化させる十分過ぎるきっかけであった。お客様が求めていたことは、「不安」を解消すること、つまりはホーチミンに行く手段を確保してくれることだ。たとえそれが2日後でも1週間後でも、筋道が示されれば不安が解消され、多少の不満は宿泊場所の確保、あるいは2万円という現金の支払いにより解消されただろう。

では、地上係員のちょっとしたコミュニケーションミスにより発生した今回のトラブルの本質はなんだろうか?
稲盛による経営改革が進み、利益に加えて顧客志向の会社として生まれ変わったはずが、混乱時にこのような対応を生んでしまったのはなぜなのかを考えてみた。


・ マネージャの力量不足
 24時間寝ていない上司に電話、という記述があるが、修羅場では、寝れない、ということはよく有ることであり、そのような修羅場でも冷静な判断が出来ることが求められるのがマネージャーだ。普段から鍛えておくわけにはなかなか行かないが、サービス業においてはそのような資質がある人を適切に配置しておくというのは重要なことだろう。

・ 期待値コントロールのミス
 これがLCCであれば、恐らくはしょうがないね、で終わっていたように思う。日本人はANAやJALに対して、世界一の航空会社であるという幻想を抱いており、「おもてなし」に近いレベルでのサービスを求めてしまっている。以前スカイマークがサービスレベルを発表して大批判を浴びていたが、提供可能な価値以上の期待を顧客にさせてしまっていたのも事実だろう。マイレージ等の効果もありロイヤリティが高い顧客であるからこそ、適切に期待値をコントロールしておかないと、顧客側の裏切られ感は半端ないものになってしまう。乗るのはエコノミーだが、搭乗価格が高いことからリッツカールトン級のホスピタリティや対応を期待してしまっているように思う。どうコントロールするのか、というのは難しいところだが。。。

・ 係員のお詫びの仕方
 お詫びとは、ただ謝ることではない。こういう場面では、とかく謝ることに終始しがちだが、謝るだけでは何も解決せず、逆になぜ怒っているのかを忘れさせ、ただ怒りを大きくしてしまう行為になりかねない。では、お詫びとはなんだろう? 茶の世界では、お詫びは「謝罪と感謝」であると言われている。まず謝罪することは間違いではないが、お客様の怒りに対して謝ることを通じて、今のままではなく自分達が何か別のことをすべきことがあることを気付かせてくれたことに感謝する、という意味合いだ。JALの係員が、謝罪と同時に感謝の気持ちを湧き上がらせていれば、つまり、自分がとるべき行動が何かを教えてくれてありがとう、という気持ちが湧き上がるようになっていれば、自然にとるべき行動を考えていただろう。この場合は、お客様が求めていることはホーチミンへの足の確保であり、その次に必要なのはそれまで滞在する場所であり、その次に必要なのがそこに行くための交通手段、最後は、その費用である、ということに気付き、行動指針を暗に示してくれた顧客に対して感謝の言葉をかけ、解決に向けて順番に動き出せばよかったのである。
 組織人として、常態的に上記のような思考回路になるようになっていれば、係員の対応は違っていたのかもしれない。


さて、サービス業においては、上記のように従業員の心がけを発端とした行動が自然に取れるようになることが非常に重要だ。経営目線でマネージメントを強化し、顧客の期待値をコントロールするのはもちろん大切なことだが、従業員の思考法を変えていくことも大事なことである。表面的な行動を変化させることはそれほど難しいことではない。しかし、従業員がどのような思考プロセスをもっているのかを理解し、その思考プロセスをその企業にとっての有るべき姿にもっていくことは非常に難しい。当然、相当な教育が必要だろうし、その教育によって従業員満足度が極めて高い状態に維持されていることが重要だろう。特に、このような思想に近い部分の教育は、採用段階以降にインプリすることは極めて難しいとも言われている。オペレーションの効率化が一段落した今、JALがさらなる成長を遂げるかは、過去採用した人材を内面にいたるまで適切に教育できるかにかかっているのだろう。