世の中にはなぜこの製品とこのキャラクターの組み合わせで広告を?
というものを時々見かける。一般的には、キャラクターは「イメージキャラクター」と呼ばれるように、製品から想起される人・キャラクターを利用するのが一般的だ。うまくいった例としては、小雪×ウィスキーや、ケイン・コスギ×リポビタンBなどだろう。

今回、カスペルスキーとAKB48の組み合わせは、少し違和感を感じた。これがなぜなのかについて考察してみたい。


まずは、ITを業務で専門にしている自分レベルでの両者に対する知識は、下記の通りだ。おそらく、一般人よりもカスペルスキーについて知っている(少なくても聞いたことがある)。

●AKB48の特徴
・若い
・多い
・最近すごいブーム
・エロかっこいい
・歌うたっている
・コアなファンが多い
・買い占めなどが発生している
・ビジネスモデルが問題になった
・リアルな存在である
・恋愛禁止
・人気投票などで話題性がある

●カスペルスキーの特徴
・ロシア出身
・KGB出身
・セキュリティーが強固なイメージ
・カスペルスキーという人がいて、その人が考えたロジック
・イメージカラーは緑
・ヒゲが生えているおじさま
・展示会などでご本人登場



というところで広告のロジックとしては、
・AKB48とカスペルスキーという意外な組合わせで
・カスペルスキーを知らない人でもなんだろうと思ってみてくれることで
・製品そのものの認知度があがるはず
・認知度が上がれば売れるはず(売れない原因は認知度の問題だ)

隠れた前提として
・製品での差別化は困難、チャネルは抑えている、価格も適正


う〜ん、なんだか極めて単純で、何か変だ。なんだか前提が足りないなぁ。


AKB48がセキュリティやITという世界からは離れたところにあり、製品のイメージと一致しない。しょこたん+ウィルスバスターの時は、すっきりしていたのに、今回は微妙だ。自分が製品担当者だとして、上記の説明じゃ、高額な広告にGoは出さないだろう。

ということで考え直してみた。
おそらくポイントは、ターゲットのセグメンテーションをうまくやれていなかった、というところじゃなかろうか?

これまでの「カスペルスキー」ブランドは、法人向けにはそれなりにウケるだろう。セキュリティを強化、その根本はカスペルスキー研究所で、暗号技術がどうのこうので、素晴らしい製品です、というブランディングだ。
(商品の良さを押し出すのが良いかどうかは微妙だけど)

一方で、多くの企業では、セキュリティ製品はリスクを冒したくないという理由で変更することが少ない。従って、2大製品のシェアが圧倒的な中で、敢えて新しいものにチャレンジしようという人は少ないだろう。にもかかわらず、商品アピールを全面にだした、聞き手不在の広告になっていたのだ。


そこでカスペルスキー+AKB48である。

法人顧客はばっさり切り捨て、個人顧客にターゲットシフトしたのだろう。
- (AKB48のような)ど素人でもカスペルスキーを選ぶ
- AKB48がCMしてるんだし、きっと有名なんだろう。
- ウィルスバスターもしょこたんだし、アイドルCM流行ってるのかな。
→ まぁ、どれでも一緒だし、とりあえずなんだかセキュリティが強そうで最近キテルやつ=カスペルスキーにしとくか。
という思考を期待しているのかな。
きっと店頭でのPOPもこれまではカスペルスキーの顔だったが、今はきっとあっちゃんの顔に完全に変わってしまってるんだろうな。

ターゲットが変わると、プロモーション方法も大きく変わる、といういい例だと思われた。また、ターゲットを絞らないとプロモーションは全く意味を成さない、ということも気づきだ。(自分は買わないもん、と思ったけど、そもそも
自分はターゲット外なんですね、すいません。)

それにしても一時期のe-MobileのCMもそうだし、IT関係者が見ると、なんでこうなるんだ?と思うことが多い。でもそれは自分がターゲットではないんだね。う〜ん、マイなリティ。

マーケティングって奥が深いなぁ。